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水族館でアジ釣り? 60年超の人気スポット 「城崎マリンワールド」

四季折々で豊富な魚介が取れる日本海。但馬には釣りが趣味という方も多いだろうが、兵庫県豊岡市瀬戸の水族館「城崎マリンワールド」でアジ釣りができることを知る人はどれぐらいいるだろう。水族館で魚釣り。しかも釣りたてをその場で天ぷらにして食べられる。何だか少し気が引けるようなこの施設は、いつ、どんな経緯でできたのだろうか?(秋山亮太)  未体験の方のために、まずは釣り場の概要を説明しよう。場所は、アザラシやペンギンたちがいる展示プールの奥。広さ約480平方メートル、深さ3~4メートルの池に、体長8~10センチのアジが常に15~20万匹泳いでいる。客はさおの針が取れてしまうまで、釣り続けられる。釣れたアジは、隣接する「アジバー」で天ぷらに調理してもらえる。来館者の3分の1が遊ぶといい、リピーターも多い。      ◆  同水族館事業部長の今津治男さん(53)によると、その起源は、前身の「日和山遊園」にまでさかのぼるという。  同遊園は1934(昭和9)年8月にオープンした。「山陰の竜宮城」と銘打ち、入り組んだ岩場が多い地形を生かして、巨大な海水の池をいくつも整備。近海の魚やウミガメ、サメなどを泳がせて客たちに見せていた。タイやハマチなどは、見るだけでなく釣ることもできたという。  アジ釣りが誕生したのは、58年。施設増築で、新たにアジ専用の池も造られた。針が取れるまで続けられる今と同様のシステムで、休日などは子どもから大人までがひしめきあった。翌59年には、現在のアジバーにあたる「船小屋食堂」も建てられた。  平成になると、同遊園がリニューアルされ、オープン当初からあった複数の池は、巨大な水槽を設けるための建設場所へ。一方でアジの池は人気だったことから、現役続行となった。足場やテント部分などは改修されているが、ほとんどの部分は開設当初と変わっておらず、同遊園の雰囲気を今に伝えている。      ◆  ところで、多い時は20万匹もいるというアジたちは、どこから来るのだろう。今津さんによると「ほとんどが、周辺の日本海にいた魚を購入してきたもの」とのこと。池は隙間で海とつながっており、釣り堀の水が常に入れ替わるようになっている。そのため、台風などで海が荒れた時などは一部のアジが“逃亡”してしまう。逆にカワハギやタコ、メジナなどが迷い込むことも。釣り上げれば「大当たり」。食べられる魚なら、アジバーで調理もしてくれるという。  今津さんは上手に釣るコツを、「小さいアジが群れを成している部分に目を付けて、浅く針を入れてみて」とアドバイスしてくれた。釣り堀の底近くは、長く釣り上げられなかった巨大なアジがいるといい、食いつかれるとほぼ確実に針が取れるからだ。  異色の釣り堀は、自然を生かして造られた歴史ある施設だった。「全国でも似た施設は少ない。3世代にわたって遊んだというお客さんもおり、ここがきっかけで『魚が好きになった』と言ってもらえたこともある。マリンワールドの顔といえる施設です」と、今津さんは誇らしげに語る。  水槽で生き物たちの生態を知り、実際に釣って味も知る。命をいただくありがたみをかみしめつつ、アジとの真剣勝負に挑もう。

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