「琵琶湖の深呼吸」確認できず… 魚介類の大量死懸念。

滋賀県は9日、琵琶湖で酸素を多く含む表層の水が湖底に行き渡る現象「全層循環」が1979年の観測開始以降、初めて完了しなかったと判断した。一部水域で酸素が回復せず、生態系への悪影響が出る恐れがある。県は「未知の状況」として底層の酸素濃度の調査を例年より増やす方針だ。  「琵琶湖の深呼吸」と呼ばれ、北湖で冬場に冷えた表層の水が沈下し、底層の水と混ざり合う現象。県によると、今年は暖冬の影響で時期がずれ込み、今津沖の水深90メートルの調査地点「第一湖盆」で、同80メートルまでしか表層の水が到達していなかった。  県は今月に水温が上昇し始めたことで、同地点では全層循環が確認できないと判断した。それ以外の地点では確認した。  県が8日に調査したところ、底層の一部で湖水1リットル当たりの酸素濃度が例年の半分程度の5ミリグラムにとどまった。生態系への影響が懸念される「貧酸素」の基準2ミリグラムは上回っているが、北湖では、春から晩秋にかけて湖底の酸素濃度は下がり続ける。同じく暖冬で全層循環が3月下旬に遅れた2007年には、第一湖盆の湖底でイサザやスジエビの大量死が報告された。  第一湖盆の面積は琵琶湖全体の20分の1で影響の程度は未知数だが、県は第一湖盆で酸素濃度の調査回数を通常の倍に増やし、水中ロボットを使い、魚介類の大量死が起きないか監視していく。担当者は「湖底の酸素を注意深くモニタリングしたい」と警戒を強めている。

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